煩悩108部屋

好き合う男と女が抱きあうのは当然のこと。
それは蜜月の瞬間。
けれど、雰囲気ぶち壊しなことだって、たまには、ある――。

桜の木の下、端目に見ても甘い、甘い雰囲気の弥勒と珊瑚。
うっとりと法師に抱きつき、肩口に顔をうずめる珊瑚。

だが、違和感に気付いた。

――この、お腹に当たってる硬いものはなに?

ふ、と顔を上げて珊瑚は弥勒を見つめる。

「法師さま、何か暗器でも仕込んでるの?」
「はい?」
「だって、なんかお腹に当たってる」

「……はい?」

――やばい。やばい。いや、これしきのことでこうなるとは自分でも思っていなかった。が。が。男は欲望に忠実!

「え、いえー、まあ、暗器といえば暗器かもしれませんねえ……」
はは、ははははー。
乾いた笑みを浮かべる。

「ふうん、そっか。法師さまも暗器とか使うんだ。でも、これ何?」
「うぐ!?」
色恋沙汰には無縁の彼女のこと、気付かないといえばそうかもしれないが……いや、流石に位置的に気付いても良いのでは?
しかも、それを握るなんて……!

「なんか……熱い?」
ん? と握りしめた手そのままに珊瑚は弥勒を上目遣いに見る。
「さ、珊瑚……およしなさい……」
ぐうう、とその顔を直視出来ずに思わず目をつむる。
挙句にはぶんぶんと握った手を振るのだから。

「何、そんなに危ないの?」
「……はい、危ないです、非常に危ないです」
「そっか」

あっさりと手を離してくれた彼女に弥勒は安堵する。

「法師さま……大好きだよ」
にこり、と笑ってまた抱きついてきた彼女だが、弥勒は妄想が駆け巡る己の脳を制御するのに精一杯。
「わ、わたしも……はい、はい、はい……」
「? 変なの」

――変なのはお前だ!

「じゃ、そろそろ戻ろっか」
「はいー……」

ぜいはあと息を整える助平法師が桜の木の下に取り残された。


Take care...



本当下ネタですいません(土下座)
法師はそのくらいでピーするのだろうか。中学生じゃあるまいし。
でも珊瑚相手ならそうかも、などと妄想。
袈裟だからすごく目立つのではないかと。
はい、本当にすみませんでしたっ!

09.07.27 漆間 周