煩悩108部屋

「あ、あのっ、弥勒さまっ……!」

ちょっと、と呼びだしたかと思えば何やら恥ずかしげな表情でもじもじとするかごめ。
一体どうした、と思って彼女に黙ってついてきてみれば。
骨喰いの井戸の前で彼女はうつむいて真っ赤になっている。

――恋愛ごとの相談か?

「かごめさま?」

かがみこんで表情を伺い見れば、彼女はついっと目をそらして、よくわからない袋をぐいと差し出した。

「こ、これ……使って!」
は、はぁ、と戸惑う弥勒に無理矢理渡して、逃げて行くかごめ。

何だ、と思い袋を開けてみれば、小さな箱が十ほど入っていた。

***

――も、もう、あんな恥ずかしいこともうしたくないんだから!

ぜいはぁと息をついてかごめは汗をぬぐう。

「でも、これで絶対大丈夫よ!」
一人拳を握って、やり遂げた感慨にふける。

「かごめちゃん、どうしたの?」
「へ? あ、ああ、珊瑚ちゃん!」
背後から声をかけられてかごめは我に帰った。

「大丈夫よ、珊瑚ちゃんの体は私が守ってあげるから……!」
「はぁ?」
一人意気込んでがしりと手を握る彼女に珊瑚は目を点にするしかなかった。

***

「珊瑚」
「何!」

夜風が鳴る。
しゅるりと開け放たれた珊瑚の体が、月光に照らされる。

「いえ、かごめさまが『珊瑚ちゃんとする時に使ってね』と書いた文と一緒にこんなものを渡して下さったのだが……」
「うん?」

何やら困った様子の彼の声に、珊瑚は夜着を胸にあてて法師のもとへ近寄る。

「何、その箱――中身……んんー? 何だろ、これ」
「どうもこれが説明らしいです」
びらり、と広げる紙。

詳しく、非常に詳しく書かれた説明だったが、どうにも意味が分からない。

「……?」
「まあ書いてある通りにすれば?」
「はあ……」

***

朝。
「かごめさま!」
ずかずかと歩み寄ってきた弥勒にかごめはん、と顔を上げる。
がしりと手を握って、彼は嬉しそうに笑った。

「ありがとうございます、あれなら心配ありませんね、しかし感触がどうにもぐは」
「それ以上生々しい話はやめて」
アッパーをくらった弥勒が倒れ、かごめは怒を滲ませて目をつむった。

――でもいいの、旅の途中で妊娠されちゃ困るんだから……!

少し離れた所で頬を赤くして法師を眺める退治屋に、にこりと笑顔を向けた。


Prevent pregnancy,please,PLEASE...



もう毎回すいません、これは書く度に神社にお清めに行かないといけませんね。
まあ渡したものはご想像の通り、でございます。
かごめちゃん可哀相に。でも珊瑚への愛だから、頑張って現代で10箱買って来たに違いない。
さあ、我らが弥珊は何日で消費するのか。
……すみません、祭り部屋だと本当、暴走します(土下座)

09.07.29 漆間 周