第一弾でございます。若干っていうかとっても下ネタです。苦手な方は読まない方がよろしいかと。↓
「法師さま?」
うららかな春の陽射し。
そそぐ太陽に緑の葉が陰影を作る。
風にそよぐ葉に光と影はうろうろと行ったり来たり。
そんな春爛漫な木陰に、愛しい人の姿を見つけて珊瑚は目を輝かせる。
遠目に見て何やら読書中の様子。
熱心に紙をめくる様が見える。
紙をめくってはふんふん、と頷き何やら怪しげな姿勢をとる弥勒。
(何だろ……修行か何かかな)
邪魔しちゃ悪いかな、なんて気分で珊瑚は少し側に寄って立ち止まった。
(でもなんか修行してる法師さまって、やっぱり法師さまなんだなあ)
当の本人が聞けば「法師です」と答えるであろうな胸中でその様を見守る。
さて紙をめくってまた次の体勢。
本を一旦手元に置いてから、横になって右手をくいっと曲げて片足だけ突き出す。
(??? 何、あれ)
次の体勢。
座って、両足を開く??
流石に不審になってきた。
どこにそんな修行があるというのか。
あの様子では体を鍛えるためのものとは言い難いし……。
(修行じゃないの、か)
そう思い、珊瑚は遠慮なく弥勒のもとに歩き出した。
いつもらしくない、真正面から近づいているというのに彼は全く自分に気がつかない。
余程読み物に夢中らしい。
そこまで法師が夢中になるのだから、何か面白いものなのだろうか。
それとも役に立つものなのだろうか。
ひょい、と。
寝転がった彼をのぞきこんで。
「法師さま? 何読んでんのさ」
声をかけて初めて「ん?」と彼は目を珊瑚に向けた。
「って、うわっ、さ、珊瑚……!」
慌てて懐に先刻からの本を隠す。
かなり驚いた様子で冷や汗すらかいている有様。
(ははん……何か見られちゃまずいもの、かな?)
と思ったら見たくなるのが人間というもの。
「さっき隠したの、何? 見せてよ」
「え、あ、いや、お前は字も読めませんし見ても意味がないかと」
「いいじゃない、法師さまが読んでくれたらいい」
「いえ、それほど大層なものでは」
「ふぅーん……」
きらり、と珊瑚の目が光る。
「見せろっ!」
素早く懐に飛び込んで、隠したブツを取り出す。
「何、四十八……?」
字が読めないとはいえ数字くらいは分かる。
「や、やめ、珊瑚……」
中を開けてみれば……
「・」
珊瑚の顔が点になった。
次いで頬がみるみるうちに朱に染まっていく。
なぜならそこにあったのは……
絡み合う、男女の絵図。
「ちょ、これ、法師さま、え!?」
混乱のあまりひょいと投げ捨てて彼を見やる。
冷や汗だらだら、といったところの彼が気まずそうな顔で苦笑していた。
「情事の、やり方です」
「ほえっ!?」
「四十八ありまして……ちょっとその研究を」
今度は開き直ったか、けろりとした顔で話しだす。
「じゃ、じゃあさっきの体勢は……!」
「え゛、見られて、ました?」
「あ、あ、あ、あんたって、ねぇ……!?」
「まあ見られていたなら仕方ありませんか。今宵、私と試してみませんか」
……………。
凍りつく珊瑚の眼差し。
待て珊瑚早まるな、と弥勒は目で訴える。
が、時既に遅し。
「飛来骨!」
叫ぶや否や法師の股間に獲物を振りおろす。
「っってぇ〜〜〜〜〜…………!!!!!」
奈落の瘴気を吸った時よりも苦しげな弥勒の顔。
「フンっ」
ばさっと髪を払って、珊瑚は踵を返した。
振り向きざまにゴミでも見るかのような目で彼を見た。
まだ悶絶している最中だった。
「あのっ、助平法師!」
心地よい春の温もりの中、股間の痛みに悶絶する破戒法師だけが取り残された。
<了>
拍手お礼第一弾です。あほうしシリーズ…の、予定。
果たしてアホなのかただ変態なだけなのか。
すいません、イメージぶち壊しで(笑)
しかし私は何よりも股間への蹴りが大好きなのです!(関係ない)
ここまで読んでくださってありがとうございました。
2009.05.15 漆間 周