Ask DNA

自分に跪きな
ママに跪きな
DNAに跪きな


Ask DNA

欲望は止まらない。
むき出しの白い太腿をつうと撫でて、喘がせて、何もかも自分のものにして、めちゃくちゃにしてやりたい。
これが愛という感情なのかただの欲望なのかは分からない。

昼の怠惰な光の中で彼女は眩しく眠る。
指先をとんとんとやって、弥勒はふぅと一息ついた。
吹き抜ける涼しい風が嫌な汗を強調する。

もし自分が手を出したら何と言われるだろうか。
せめぎあう二つの感情がぐるぐると自分の中で渦巻いて、苛立をつのらせる。
刻む指先の音が早くなる。

「ああ、もう……!」

がばりと立ち上がった弥勒が珊瑚を上から見下ろす。
夜着をまとったまま、まだこの刻限になっても眠っている妻。

「ん……何?」
ぐ、と体を正面に起こせば胸があらわになる。
あ、と珊瑚は零してあわてて胸をかばった。
「遅い」
「あ……んっ」
唇を塞がれて珊瑚が喘ぐ。

――ああこれが求めていたもの。

容赦なくそのままぐいと着物を引き下げる。
「んうっ……! ちょっと、法師さま……!」
揺れた胸をそのまま鷲掴んで揉みしだく。
敏感な部分をくすぐれば余計に昂る声に己も昂る。

「良いか……?」
「あ、んっ……無理矢理は嫌だって……! この前言ったろ!?」
「そんなものは知らん」
言ってつうと体の中心を舐め上げる。
女の声で快楽の声を上げる彼女に悦ぶ。
「大体……こんな真っ昼間から!」
「それは仕方ないでしょう、お前が昨晩のままの格好でこのような刻限まで寝ているのですから」
ん? と彼女の顔を見遣って、そのままずぶりと指を差し入れる。
「くあっ……! そ、それは……!」

――昨晩あれだけ行為に及んで及んで及んだのだから。

言いたいことは分かったし、あれだけ肌を重ねておいて満足していない自分にもやれやれとは思う。
が、仕方がない。

「い、やあっ……!」
昂った己のそれを差し込めば珊瑚は顎をついと反らして黒髪を揺らす。
そこを庇うように両腕を伸ばすものだから、豊な胸が余計に強調される。
「そんなそそる様子をするな……ただでさえ……はっ」
つうと伝う汗に言葉が途切れる。

愛しいかと尋ねる。
それはどういう意味の行為かと聞く。
そんなものは。

意味などというものは。

「……無いんだ」
「な、に……? あ、ちょっと……! んっ……あ、あうっ……あ、あ、ああっ! やめ……」
「止めて欲しいか? 本当に? こんなにしておいて?」
先ほど差し入れた指にまとわりついた愛液を彼女の目の前でちらつかせる。
途端に頬を染めて目を反らす珊瑚に嗜虐心がそそられ、思わずにやりと笑んでしまう。

「ほら」
つ、とその指を口に差し入れると珊瑚はむぐ、と叫んで両腕で払う。
「ふ……まあ、止めて欲しくないんだろう?」
「ん……そ、そんなこと……!」
「昨日、あれだけしておいて?」
「ち、違う……!」

そう言いながらも動かす場所は動かして、止めることなく責め立て続ける。
合わせて響く嬌声に悦びが昇り行く。

「く、あ……」
「あ、あああああああっ!」

果てたのは同時で、お互い荒れた息のまま見つめ合った。
ぷいと反らすのは決まって珊瑚。

その様子にははと弥勒は苦笑する。
果ててやっと理性が戻ったか、すまないと自然と言葉がこぼれた。

「いいよ、別に」
彼女はいつでもそう言う。
「すまないな、男は欲望のままだから」
「……でも、法師さまがそのために他のひとの所に行かなくなったからいい」
「と、言いますと?」

そっといたわるように彼女を背後から抱きしめた弥勒の顎に、珊瑚の指がかかる。

「こうして一緒になる前は……法師さま、辛い事があったりしたら、あたしじゃなくて他のひとのところに行ってた」
「……」
「違う?」

否定できない事実に弥勒はただ笑った。
ばか、とすねる珊瑚にやはりこのおなごは男というものをまだまだ知らないのだと思う。

今、行為に及んだのは、純粋にそこに愛しいひとがいて、そして誘うような姿で横たわっていたから。
愛しい、がなくてもそうなってしまうのが男はひどいものだと自分でも思うが、それでも男は男だ。

「……しかし、そういう行為でも、お前だけですから」
「?」
不思議そうに見つめてくる珊瑚に弥勒は悪戯心をおこして鼻をつまんでやる。
「ふにゃ」
「まだまだ、お前は分かっておらん」
「……?」

まだまだ。

そして、自分の制御も、まだまだ。

どこまでも愛おしくて、守りたくて、必要な彼女を失いたくないから。

今までふらりふらりとしていた自分ではいけないのだ、と言い聞かせた。
珊瑚以外には決して。

男の欲望に、跪くつもりはない。


fin.



COWBOY BEBOPのAsk DNAからのイメージで書きました。
タイトルも同じく。
(タイトルセンスは相変わらずありません)
怠惰で欲望のままのニュアンスで進めて、男全開な弥勒法師で行きたかったのですが、そうなると愛もへったくれもないので、無理矢理まとめました。
それでは、ここまで読んで下さってありがとうございました。

2009.09.22 漆間 周