Fantasy!

時刻は午後四時。
まだまだ明るい刻限ではあるが、部屋につけられた「でんき」に犬夜叉を除いた一行は驚きを見せる。
かごめに付いてきてはしょっちゅう出入りしている犬夜叉はともかく、他は皆現代に慣れない。
というか、全く知らないわけなのだし、500年後にタイムスリップしたに等しいのだ。
戦国時代から文明社会へジャンプ!
……と言っても、すぐに慣れるはずがない。
というか慣れたらすごい。
犬夜叉はバカだからあんなに慣れてるんだわ、などと弥勒珊瑚の様子を見つつかごめは考えていた。

まずかごめの母は部屋を用意してくれた。
珊瑚はかごめの部屋で、犬夜叉と弥勒は草太の部屋で寝泊まりすることになった。
今は夕飯を待ってかごめと珊瑚二人、平穏な語らいの時間である。

「ここってさあ……ほんとにかごめちゃんの国なの?」
かごめのベッドの横に敷かれた敷布団に小袖姿で座りながら珊瑚は言った。
この布団を見た時も珊瑚は驚いていた。
こんなの……帝でも使ってないよ!と言って。
「そだよー。でもまあ国っていうか……未来、かな」
ベッドの横のカーテンをめくり、ちらりと御神木を見てかごめが答える。
「未来?」
「うん、そ。珊瑚ちゃんたちがいた時代の、500年後くらいかな」
「……??」
説明したものの、困惑顔の珊瑚がそこにいる。
「んー……だから、そうだなあ。平安時代から鎌倉時代に一気に来たみたいな感じ」
「? 平安……? 鎌倉時代……って……何?」
あー、と額を押さえてかごめは天井を仰いだ。
そうだ、何時代なんて定義は現代になって歴史家がつけたものに過ぎない。
歴史を知っているとすれば弥勒くらいのものだろう。
庶民は「今生きる」ことに精一杯、文字も読めないのが当たり前、そんな時代なのだから。

どう説明すればいいものやら。
うーん、と腕組みして考えてかごめは精一杯言った。

「えっと、一年経つでしょ? 二年経つでしょ? それがいっぱいになったら五百年経つでしょ?」
うん、と珊瑚は頷く。
「で、普通は一年経つには一年かかるでしょ? それを一年経つのが一日になっちゃったみたいに、井戸を通った一瞬で五百年経った、ってこと」
うん。
「えーと……珊瑚ちゃん?」
いち、にい、さん、と指で数えている珊瑚に声をかける。
「ご、ごひゃくねん!?」
果たして指で五百を数えたのかどうかは別として、その数字の大きさに珊瑚は声を上げた。
「じゃ、じゃあ私五百歳くらい……?」
「違う、違うよ珊瑚ちゃん! もう」
その浦島太郎のような発想に思わず笑いが漏れる。
「珊瑚ちゃんは十六歳のまま。そのまま、一瞬で五百年の時を井戸で越えて来たの」
は?という顔で珊瑚はかごめの顔を見つめた。

一瞬で、五百年?
じゃあここは、とても、とても遠い、未来の国?

「ね、ねえ、じゃあ武蔵国はどうなってるの!?」

意外な方向へ向いた彼女の興味にかごめはきょとんとする。
武蔵国、武蔵国……ああ、そうか。

「えっとね」
そう言って勉強机から地図帳を取り出す。
日本、関東をめくり珊瑚の前に広げた。
じい、と見つめる珊瑚。

「すごい、色がついてる。何で塗ってあるの? これ、紙だよね。こんなに沢山……でもこの絵は何?」
ああ、地図を知らないのか。
それはそうだ、確か歴史の資料で見た戦国時代の所領地図は墨でかかれた超・適当モノ。
正確な日本地図は伊能忠敬が作ったから、江戸時代だ。
「これ、地図っていうの。えーと、地形とか表してる絵で……えっと、ここらへんが武蔵の国かな?」
北条早雲の領域だったあたりをくるりと指でなぞる。
「青いところは海、緑のが陸地で濃くなって行ってるとこは山なの」
ふぅーんと興味深げに唸って珊瑚は地図帳を見つめている。
そんな彼女に今度は世界地図を広げた。
「これが、世界地図。これがアメリカで、中国で、オーストラリアで、ここが日本なの」
「世界……? 日本……?」
またしても困惑。
ああ、忘れてた、とかごめは嘆息した。
世界という概念も、日本という概念もないはずなのだから。
またどう説明していいものか分からない。

「とりあえず、日本っていうのは大和のこと。世界ってのは……大和以外のほかの国も合わせた名前、かな。南蛮とか、知ってるでしょ?」
「うん。南蛮からはいいものが来るからね。鉄砲も南蛮から来たって聞いたことがあるよ」
「南蛮っていうのが、ここかな?」
とりあえず中国、東南アジア周辺を指差す。
「ここから、ここに船が来て品物を届けてるのね」
まるで歴史の先生の気分だった。
それも何の予備知識もない子供に教えるようだ。
日本を差した指に珊瑚がまたしても仰天した。

「大和って……こんなに小さいの!?」

そうだ、かつての維新家たちも世界地図を見て日本のあまりの小ささに驚いたという。
珊瑚の驚きも当然だった。
戦国時代初、世界の広さに驚いた人。である。

「うん。でも、平和で豊かな国なんだよ、今私がいる時代は」
「平和……なんだ」

ほう、と感嘆の目で珊瑚は世界地図を見つめる。
そういえば祠から出てきた時、見た外の景色は素晴しかった。
頑丈そうな建物が並んで、道を通る人は皆笑顔で、かごめと似たような服を着ている。
武器を所持した人なんて誰もいなかった。

そんな国からかごめは来たのだ。
誰もが争い、妖怪に脅え、日々の暮らしをただ追い求める国に。

「かごめちゃん……あたし」
ふと暗い瞳で珊瑚はかごめを見つめて、何か言おうとした。
だがそれは、母の「ご飯よー」の声で遮られてしまった。

***

午後六時。
先ほど珊瑚に時計とアラビア数字を教えた。
元来物わかりのいい性質らしく、飲み込みははやかった。
「ろくじ、なんだね?」
居間の時計を指さして笑いながら珊瑚が言う。

そこにひょっこり現れた弥勒がおや、かごめさまに教えていただいたのですか、と言った。
「うん、すごいんだよ、どれもさ」
「ほう……私も色々と興味のあることがあるのですが」
かごめさま? と弥勒がかごめに目を向ける。
「ここは大和の五百年後の姿と聞きましたが、その五百年の経緯を知りたいものですな」
流石は弥勒だ、とかごめは感嘆した。
一応僧侶を名乗り書物を読み、彼は戦国の世で知識人なのである。

「いいわよ。ま、とりあえず晩御飯食べてからにしましょ」
にこっと笑って皆に卓を囲んで座るよう促す。

夕飯は鍋だった。

「遠慮なく食べてね。お箸、つっこんじゃっていいから」
にこやかに笑うかごめの母。

鍋は戦国時代でも当たり前に使用するものだったから、皆慣れたようすで箸を使って、米を食べていた。
かごめの母はその様子をにこやかに見守っていて、ねえ、どんな旅をしてるの? などと弥勒と会話している。
相変わらず祖父は二匹の妖怪を不思議そうに見ていて、草太はぼーっと珊瑚の様子を見ていた。
あまりに見るため箸など落としたりもしている。

平穏な夕飯なはずだったが、一行の興味は意外なところに注がれた。
茶である。

もとは弥勒がこんな高級品を、と言ったのが始まり。
それに珊瑚と七宝がこれが茶というやつなのか、とありがたそうに飲む。

そうだった、庶民にとって戦国時代では本物の茶など雲の上のモノだったのだ。

「でも茶色いよ? 緑だって聞いてたけど」
「ああ、それはね。お番茶って言って、緑茶をさらに熟成したものなの」
りょくちゃ、というのが自身の思う茶らしい、と察して珊瑚はふむ、と頷く。
「こんなの、みんな飲めるんだ。すごいよ、ほんと」

「そうねぇ……私たち、この時代に生まれて感謝すべきなのかもしれないわね」
珊瑚の言葉に何やら感じるところがあったらしく、かごめの母がしみじみと呟いた。
「あったかいお布団に便利な機械に、車に、夜でもこんなに明るくしてくれる電気に、全部」

「何も……その思いだけで十分なのですよ。我々は我々の時代に、そこで生きるべくして生まれているのですから」
母の言葉に弥勒が返す。
「それに、どんな時代であろうと、人の心に満足などなかなか生まれません。足るを知るというのが大切なのですよ」
「そうかしら?」
「ええ。生きている限り悩みは尽きません。かごめさまの国のように我々にとって驚くべきものがあっても、人が悩むことはいつの時代でも同じですよ」

珍しく法師然とした言葉に一行は一斉につっこみを開始する。

「何を言うとるんじゃ弥勒、普段はへらへらへらへらおなごの手ばかり握っておるくせに」
「法師さま……本当に法師さまだったんだね」
「てめぇが坊主らしいこと言うと頭おかしくなったのかと思うぜ」
「みぃ」

「雲母まで……坊主じゃありません、法師です……」

真面目に行動しろといつも言うくせにこう真面目に出ると、こんなに傷つけられるとは……。
一人傷心の弥勒であった。

やがて夕飯も終わり、団欒の時間となる。
交わされる質問は途絶えることない。
例えばテレビ、例えば炊飯器、水道、部屋のいたるところに一行は反応した。
かごめも、家族も精一杯答えるが、どうにも説明が難しい。
言葉を知らない子供に教えるのと似ていた。
テレビ一つとっても、まずは動画というものの説明に始まり、電波、ブラウン管のシステムと一から十まで言わなければいけないのだから。

祖父が突然言葉を発した。
「ところで、あんた方の時代はどうなんじゃ?」
じいちゃんだいたい分かってるでしょ! かごめは心の中叫んだ。
まあ実際に戦国時代に生きる人間を目の前にすれば歴史を知っていても疑問が生まれるのは当然なのだが。

「そうですねえ……かごめさまの国とは正反対、ですかな」
「戦が絶えない。農民まで戦に刈りだされる。冬の休耕の時期なんてひどいもんさ。そりゃ農民は仕事がないからいいんだ、でもあれは口減らしも兼ねてる」
「灯はこんなに明るくないしのう。夜は真っ暗じゃ。あと妖怪がわんさかでるの」
「……けっ、人間どものやるこたぁどうにも分からねえぜ」

「戦、か……」
一瞬祖父が遠い目をした。
「戦争ならわしも経験があるぞ。戦国時代とは違うがな、そりゃ恐ろしいもんじゃった。B-29が飛んできて焼夷弾をたーくさん落していきよる。焼きだされて逃げても火が回るんじゃ。真っ黒焦げの死体がごろごろ転がっておった。じゃがわしらも自分の身を守るのが精一杯でな、そんな黒焦げの死体も、助けてくれなんて声も、全部無視じゃった」
はぁ、と深い溜息を祖父がつく。
「誰かの死体を踏んずけても逃げた。周りなんぞ気にしてられんかった。瓦礫の下から聞こえてくる悲鳴じゃとか、助けを求める声じゃとか、今でも忘れられんよ」
「じいちゃん……」
珍しい祖父の様子にかごめも草太も驚く。
祖父が思い出しているのは太平洋戦争だ。
勿論、一行が知るはずもない未来の戦争。

「その戦は……武士でないものまで攻撃したのですか?」
弥勒が言う。
彼には大方想像がついているのだろう。
かごめの祖父が今しがた語った戦とは未来の戦であることに。
「そうじゃ。原爆までアメリカは落としてきた。わしは東京におったからただ新聞で記事を見ただけじゃった。じゃが広島におったもんから話を聞けば、それは地獄絵図だったと」
「私どもの時代の戦は、基本的に武士以外は殺しません。民衆を手にかけるのはご法度。たまに、やらかすものもおりますがね……」
原爆やらB-29やら、それが何かは理解していないのだろうが、弥勒はその悲惨さに驚きを隠せない様子だった。
「どうやら……五百年、大和は安泰な道を進むというわけではないのですね」

***

かぽーん。
広い浴槽につかってかごめはうーん、と背中を伸ばす。
「やっぱり我が家だわぁ……」
そんなかごめにくすりと笑って、珊瑚は蛇口を捻った。
風呂の使い方はかごめから教わった。
犬夜叉と弥勒にもかごめは入る前に「ここ捻ったらお湯出るからね」と説明していた。
「しゃわー」の先端から暖かい湯がもったいないくらいに溢れ出してくる。
「しゃんぷー」とやらを使って髪を洗ったのだ。
泡が流れて行く。

洗い終えて、かごめの横につかりながら珊瑚は考えていた。
この贅沢さ。
この不思議さ。
この平和さ。
でも。

「かごめちゃんはさ、むこうに来たこと、後悔してないの?」
こんなに安全であったかくて、気持ちのいいとこなのに。むこうはかごめちゃん、つらいだろ? と。
「してないよ? だって、みんながいるし」
かごめはにこやかに笑った。

体を洗うかごめを見て珊瑚は気付いていた。
彼女の体のあちらこちらに、自分ほどではないものの傷痕があるのを。

「でもここにいたらかごめちゃんは怪我しない。不便もしない。だろ?」
「珊瑚ちゃんほど私、役に立たないから、そんなに怪我しないよ。それに四魂のかけら、見つけるには私の目が必要でしょ?」
そりゃそうだけどさ、と。
浴槽に半分顔を沈めて珊瑚は考えた。

自分と歳も違わぬこの少女が、こんな平和な時代に住んでいてあの時代で旅をすることはどんなにつらいだろうか、と。

「大丈夫よ、珊瑚ちゃん」
己の心中に気付いてか、かごめは優しい笑顔を向ける。
「だって皆が守ってくれるもの。珊瑚ちゃんだって、女の子で私と歳も違わないのにすっごく強くて、守ってくれる」
ね?

笑顔のかごめに申し訳ない。
自分はそこまで強いだろうか? まだまだなのに。
でも彼女はあちらに行くことに躊躇いはないらしい。
かごめの意思の強さは知っている。
犬夜叉への恋心も知っている。

なら……。

「あたし頑張るから。かごめちゃんに絶対怪我なんかさせないから!」
ざば、と立ち上がって言った珊瑚にかごめはいいのいいの、とまた笑う。

「もう十分守ってもらってるもの。珊瑚ちゃんだけじゃない、犬夜叉も、弥勒さまも」
「うん……」
この少女の勇気にいつもいつも感嘆させられる。
彼女は確かに、戦闘員としては、弱い。
けれど、誰かに守ってもらえるという確固たる自信。
それは、彼女が仲間にどこまでも信頼を置いている証拠なのだ。それは、強さだ。
どんな強靭な武器でも敵わない強さだ。
一人で突っ走るたちの自分とはまるで正反対だな、と珊瑚は思った。

「ところでさぁ、珊瑚ちゃん」
「ん?」
「弥勒さまとは、どこまでいってるの?」

「……な!」
先ほどの深刻な考えはどこへやら、一気にかっと朱に染まる顔。
「ど、どこまで、って……」

「だからー、キスとか、した?」
「き、きす……?」
「接吻のこと」
さらりと言ってのけたかごめにう、と言葉をつまらせる。

したような、してないような。
ていうか、されてるような。
ていうか、してる。

「し、したけど……でも法師さま浮気性だし! 助平だし! いい感じだなあって思ったらすぐお尻さわってくるし!」
俄然拳を握りしめて彼の人への愚痴を叫ぶ。
「ふふーん。弥勒さまは珊瑚ちゃんのこと、本気だと思うよ?」
にいー、とどこか彼の人に似た笑みを浮かべてかごめが言った。
「そ、そかな……?」

むぅ。

「……じゃあかごめちゃんは!? 犬夜叉と、どうなの!?」
半ば自棄で聞いた。
珊瑚の言葉にかごめは驚いた顔をして、自身同様に顔を赤く染める。
「アイツ……桔梗のこと忘れてないし……私、分かんない」
一瞬でどんよりとした空気になってしまった。
ああ、悪いことを聞いてしまった、と珊瑚は思った。

「ご、ごめん……でもさ、かごめちゃん。あたし、犬夜叉はかごめちゃんのこと好きなんだと思うよ?」
そうだ、誰よりかごめを守ろうとしているのは犬夜叉で。
桔梗の幻影に惑わされながらも、そのせいで傷つけたかごめを気遣う彼の心中も知っている。
不器用さ故に、彼は何も出来ないでいるが。

「あいつ、不器用だから。悪い口しか叩けないし、かごめちゃんが落ち込んでても何したらいいのか分かんなくておろおろしてるあいつを見たことある」
「そう……なの?」
「桔梗のことは……あたしにも犬夜叉の気持ちは分かんないけど、でも犬夜叉はかごめちゃんのために精一杯やってる」

「もう、法師さまと正反対。犬夜叉は不器用すぎるし、法師さまは器用すぎ。困っちゃうよね」
苦笑いしてかごめを見る。
これには彼女も同意見だったらしく、あはは、と彼女もまた、苦笑いを返した。

「頑張ろうね、珊瑚ちゃん!」
乙女だもの、と付け加えてかごめは湯から上った。

***

湯上りの、ベッドタイム。
珊瑚の長い髪をドライヤーで乾かして、自分のパジャマを貸した。
珊瑚ちゃんの髪、奇麗だなあなんて乾かしながら思ったものだ。

そんな彼女は心地良さそうにパジャマ姿で布団に横になっている。
雲母も、その枕元に丸くなっていた。

「かごめちゃん、明日はどうするの?」
「ああ、明日? んー、折角だしどこか出かけようと思うなあ」
そのためにはまず服買わなくちゃ!
かごめは俄然やる気だった。仲間に洋服を着せる。
これは旅の途中の彼女の密かな願いだった。

「着物? 着物なら持ってるだろ、みんな」
「だめだめ、着物なんか着て歩いたら目立っちゃう!」
「え、じゃあまさか裸で歩くの!?」
なんだか激しく誤解が。
かごめは頭を押さえた。
そうだ、着物は着るもの、という意味であって、洋服と和服の違いを知らないのだ。

「えっと、洋服がいるの! 珊瑚ちゃんみたいな小袖とか、犬夜叉の衣とか、弥勒さまは……まあお坊さんはこの時代にもいるけど、でも目立つから」
「ようふく? かごめちゃんがいつも着てるみたいな?」
顔を青くした珊瑚にかごめは苦笑した。
露出の高い服だと恐れているのだろう。
「大丈夫、ちゃんと肌隠れるのもあるから」
「よ、良かった……」

「ねえ、珊瑚ちゃん」
「ん?」
あのね。

――こっちで弥勒さまとデートして、その時は弥勒さまのこと、名前で呼んであげて?

「なっ、名前で!? 無理! 無理! 絶対無理!」
全力で首を振る珊瑚。
かごめはいたずらを楽しむ少女のように、珊瑚に言った。
「んーと、呼ばなかったら……弥勒さまと混浴の罰!」

な……。

絶句する珊瑚を尻目にふっふーんと鼻歌交じりでファッション雑誌をめくる。
珊瑚に出来るだけ似合う服を着せるべく気合い十分なのである。

「明日、楽しみだねー」

……ちょっと怖いです……。

そんなことは言えずに、珊瑚は「おやすみ」と寝る大勢に入った。
邪気なくかごめはおやすみ、と返してくる。

乙女二人寄れば恋の話に余念がない。
そんな二人の恋は、まだまだこれから。


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五百年のジェネレーションギャップと乙女の会話編(笑)プラスじいちゃんの戦争のお話?
説明書いてて難しいです。
テレビの説明とか出来るかあ!
でも書いてて楽しかったです、はい(笑)
ところで皆さん、「名前で呼ぶ」か「混浴の罰」かどちらがお好みですか?(笑)
ぜひお好みの方Web拍手などでお伝え下さい。
自分でも思案中ですので、読んで下さってる方のご希望にお応えしたいと思います^^
ここまで読んで下さってありがとうございました。

2009.05.23 漆間 周